こんぺいとう

スクロールで、ものがたりがすすみます

ボクはいつも、金平糖を見ると、幼いころを思い出してしまう。

幼いボクには、怖いものがたくさんあった。

金平糖もその一つだった。

金平糖をはじめてみたときの衝撃は忘れられない。

母に渡されたそれは、角がたくさんあった。

こんなトゲトゲを食べたら、おなかがケガしちゃう。

そう思い、母に訴えたが、母は平然と金平糖を食べていた。

そうか、大人はおなかが丈夫だから平気なんだ。

そしてボクはキレイな空きビンに金平糖を入れた。

そんなことが何度も続き、ビンは少しずついっぱいになっていった。

普通の人なら、キレイとかカワイイと評する金平糖だったが、

ボクにはただただ恐怖だった。

ボクは運動が好きで、よく外で遊んでいた。

ある日、初めて逆上がりに成功した。

他の友達は誰もできなかったので、歓声があがった。

大人だねとほめられた。

家に帰ると、やはりビンには金平糖が入っていた。

大人だね、という言葉が心地よく耳にひびいた。

大人なんだから、もう、金平糖だって食べられるんだ。

そう思い、ビンに手を伸ばした。

一粒、つまんで手にとった。

黄色い金平糖は、手のひらで無防備にころがっていた。

トゲトゲを恐れつつ、そっと口にいれる。

舌にのせてコロコロと転がすと、なんとも甘くておいしい。

少しかんでみようかと、歯と歯に挟むと、すぐに砕けて小さくなった。

ボクは、小さいトゲトゲがおなかを傷つけないように、

完全に溶けるまでなめつづけた。

気づくと、いつの間にか金平糖はなくなっていた。

そして、思わずもう一つ手を伸ばしていた。

これが、幼いボクと金平糖とのたたかいの記録である。

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